COLUMN

目医者・やぶ医者

meisha先日テレビを見ていて、私自身は何も気付かずにいたが「ただ今、不適切な表現がありました。お詫び致します。」という追加があった。これは解説者の「やや片手落ちの裁定」という発言をさしていたようである。調べてみると片手落ちは既に20年程も前から「放送上差し控えたい用語」になっている。 最近はかなり緩和されているようであるが、これまでに放送上差し控えたい用語として取り上げられたものは非常に多くあり、これらには差別用語、職業賎称、侮蔑用語、俗語、不快感を持たれる言葉等がある。片手落ち以外の体の一部に関係する用語としては、他にも首切り、二の足を踏む、股にかける、鼻つまみ、足を洗う、尻ぬぐい等があり、又、ちかめ、はげ等の一般的病名呼称もなるべく使わないようにとされている。

我々医師に関係するものとしてはヤブ医者、タケノコ医者は勿論の事、町医者もダメで、町医者は開業医と言いかえるようにと定められている。ところで、歯科医師が歯医者と呼ばれる例はあるが、医師の中で何々医者と一般的に呼ばれるものとしては眼科医が目医者と呼ばれているだけである。

某新聞社の用語集には歯医者を歯科医と書くようにと記載されているが、目医者については触れられていない。良いように解釈すれば、眼科医が身近で親しみを持たれているとも考えられるが、やはりなんとなく嫌な感じがすることもある。放送用語や新聞用語でも取り上げて頂きたいし、一般の方々も目医者ではなく、眼科医とお呼び頂きたい。

なお参考までに、一般的ではないが、小児科医に対して稚児医者という言葉があるようである。又、名医に対しては利き医者、迷医に対しては太鼓医者、幇間医者、徒(かち)医者、でも医者、おさすり医者、絵馬医者等がある。又、前述のヤブ医者の語源には色々の説があるが代表的なものとしては、薮は普段は靜かであるが、風が吹くとザワつく。評判の悪い医者の所も普段は閑散としているが、風邪が流行ると風邪くらいなら大丈夫だろうということで賑わう。つまり、カゼで賑わうという説と、薮を通して向こう側を見ると見通しが悪いということで、見通しの利かない医者という説がある。後説では更に未熟で、全く見通しの利かない医者のことを土手医者というそうである。又、タケノコ医者は、ヤブ医者にも至らない、まだその下の医者という意味だそうである。